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日本国憲法の嫡子たる祝日法

日本国憲法が施行された翌年の昭和23年7月20日、「国民の祝日に関する法律(通称・祝日法)」が施行され、従来の祝日は廃止あるいは改称された。

【廃止】

元始祭〔1月3日〕
新年宴会〔1月5日〕
紀元節〔2月11日〕
神武天皇祭〔4月3日〕
神嘗祭〔10月17日〕
大正天皇祭(先帝祭)〔12月25日〕

【改称】

四方節〔1月1日〕→元日
春季皇霊祭〔春分日〕→春分の日
天長節〔4月29日〕→天皇誕生日
秋季皇霊祭〔秋分日〕→秋分の日
明治節〔11月3日〕→文化の日
新嘗祭〔11月23日〕→勤労感謝の日

その一方、成人の日〔1月15日〕、憲法記念日〔5月3日〕、こどもの日〔5月5日〕が新たに加えられる。祝日の日程や名称を定めるに際して日本国憲法の精神に則ることが強く意識されたことは、「自由と平和を求めてやまない日本国民は、美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、ここに国民こぞつて祝い、感謝し、又は記念する日を定め、これを『国民の祝日』と名づける」という第一条の規定からも明らかであろう。

そのため、日本国憲法の精神に反するとされたものは、世論調査で上位を占めてゐたにもかかわらず「国民の祝日」から除外された。その筆頭は神武建国に由来する「紀元節」であるが、明治の御代を追憶する「明治節」もまた排除された。

「紀元節」の復活

昭和26年3月9日、参議院予算委員会において吉田茂首相が紀元節の復活を明言した。同年9月8日にサンフランシスコ講和条約が調印されると、神社本庁などが中心となって「紀元節」復活の運動が進められる。

昭和32年2月、「建国記念日」の制定を目指す祝日法改正案が議員立法として自民党から提出され、衆議院で可決されたものの、参議院では審議未了のまま廃案となった。その後、日米安全保障条約改定を巡る混乱を挟み、7回にわたって提出されるも、左派勢力は神武建国に由来する非科学的な祝日であるとの歴史認識を振りかざして激しく抵抗し、成立に至らぬまま時だけが過ぎていく。

昭和40年3月、佐藤栄作内閣は祝日法改正案を提出する。「敬老の日」〔9月15日〕、「体育の日」〔10月10日〕と併せて「建国記念の日」の実現を目指すものであった。この案は会期終了に伴う審議未了廃案となったが、翌昭和41年3月に再提出される。だが、これに対する野党の反対は強く、「建国記念の日」の日付は政令で別に定めるということで与野党の妥協が成立し、改正案は可決成立した。その後、建国記念日審議会の答申に従って佐藤内閣は2月11日を「建国記念の日」と定め、「紀元節」が復活する。

あと一歩まで来た

さて、次は「明治節」だ。けれども、そこに至る道のりは遠い。占領下に皇室典範が改定された結果、元号の法的根拠は失われており、「明治」という元号を関する祝日の制定を云々する情況になかった。しかし、昭和54年6月12日に元号法が成立し、この問題はクリアされる。

昭和64年1月7日に昭和天皇が崩御された後、「明治節」の例に倣つて4月29日は「昭和」を冠した祝日とすべきとの主張もあったが、時の竹下登内閣は左派勢力に配慮して「みどりの日」とした。これに対して、「昭和の日」制定を目指す有志が平成5年に《「昭和の日」推進ネットワーク》を結成して祝日法改正の請願署名運動を展開し、平成10年4月に超党派の「昭和の日」推進議員連盟が結成される。その後、平成12年3月に議員立法として自民党・自由党・公明党から提出され、参議院では可決されるも、森喜朗首相の「神の国発言」の影響で衆議院における採決が見送られた挙句、解散により審議未了のまま廃案となった。続いて、平成14年7月に自民党・保守新党から再提出され、衆議院では可決されるものの、またもや解散により審議未了のまま廃案となった。そして、平成16年3月に自民党・公明党から提出されたものが漸く衆参両院で可決され、平成17年5月20日に「昭和の日」が実現した。

「昭和の日」の実現を受けて、「明治の日」制定運動がスタートしたのは平成20年11月のこと。平成23年10月には、《明治の日推進協議会》を結成し、祝日法改正の請願署名運動を展開するとともに、国会議員に対する働きかけを行ってきた〔詳細はウェブサイト(http://meijinohi.com/)を御覧頂きたい〕。その甲斐あって、来る5月11日に《明治の日を実現するための議員連盟》の設立総会を実施するところまで漕ぎつけた。ここまで来れば、法案提出そして国会における可決だけである。とは云え、「紀元節」や「昭和の日」と同じく、左派勢力の妨害が予想される。そうした妨害を打ち砕くためにも、明治史に対する正しい歴史認識を伝え、世論を喚起することが必要だ。

読者諸兄姉におかれても、請願署名運動を始め本協議会の活動に御支援を下さるよう心から御願い申し上げる。

〔新しい歴史教科書を作る会『史』(平成30年5月号)〕